chocolate lips
 

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「薬師寺様、いつもありがとうございます」
 
行き付けの店に入ると店長を初めとして
店員たちが花道を作り涼子を出迎える
 
店員に傅かれ涼子は店内を闊歩する
 
「こちらへどうぞ。お飲み物をお持ちしますが?」
 
VIP用に誂えられたスペースの
中央に鎮座する白いソファに腰を下ろす
 
「珈琲をお願い」
「畏まりました」
 
恭しく頭を下げた店員が退室すると
涼子は用意されていたカタログを拡げた
 
(さて、どんなのにしようかな♪)
 
冊子の中のモデルが身に付けた色取り取りの下着たち
 
可愛らしいベビーピンク
妖艶な黒
 
サテンにコットン
素材もまちまち
 
「御久し振りですね」
「そうね」
 
先ほど涼子を出迎えた店長が微笑みながら入ってくる
 
「明後日デートだから新調しようかなって」
「まあ、意味深ですわ」
 
涼子の言葉に店長はコロコロと笑う
 
「それでしたら、とっておきがありますのよ」
 
***
 
「…警視、機嫌直して下さいよ」
 
全身から不機嫌オーラを醸し出す涼子を泉田は宥めていた
 
「仕方ないでしょう、仕事なんだから」
「何だって私が非番の日に目の前で立て籠もり事件なんて起きるのさ」
 
"あなたがトラブル招き体質だから"
そう言いそうになるのをグッと堪えて
 
「犯人打ち殺しちゃ駄目って言うしさ」
「…ここは日本ですから、犯人にも人権が」
 
「私の邪魔をする奴なんかに人権は無い」
 
ぶすっと膨れながら文句を垂れる涼子
 
「全く…」
 
不機嫌な理由を解かっている泉田
苦笑してポンポンと涼子の頭を叩いた
 
「この埋め合わせは今度しましょう…えっと、博物館とディナー?」
「…ショッピング追加」
 
「…解かりましたよ」
 
"だから機嫌を直して"
 
そう頭をポンポンと叩く優しい仕草と
泉田の仕方ないなって言葉に涼子はニッコリと笑った
 
「手を打ってしんぜよう」
「有り難き幸せ」
 
ヒールの音を機嫌よくたてながら腕に絡みついてきた涼子に
泉田はクスリと笑い残務処理をする警官たちの間を縫って帰路につく
 
「さて、今夜のディナーはどうします?」
「…私、いいお店を知っていてよ」
 
涼子は手を上げてタクシーを止める
運転手に告げた住所に泉田は小さく笑った
 
「「お帰りなさい、ミ・レディ」」
「ただいま♪」
 
「「こんばんわ、ムッシュ・泉田」」
「こんばんわ、今夜は御馳走になるよ」
 
"着替えてくる"という涼子と別れて
メイドと共にリビングに向かえば良い匂いを漂わせる温かい料理
 
「どうぞ」
「ありがとう」
 
慣れてきたフランス語で礼を言えば二人はにこりと笑い
もう帰宅すること、酒は冷蔵庫にあることを泉田に告げた
 
(…もしかして、気を使われた???)
 
一人残されたリビングでぼんやりとしながらそう考えていると
涼子が入ってきた
 
「ん〜、美味しそうな匂い」
 
早く食べようと急かす涼子に頷き
泉田は慣れた仕草で用意されたワインを開けた
 
「「乾杯」」
 
カチンとグラスを鳴らして渋みのある赤いワインを飲み下す
美味しい料理に舌鼓を打ちながら勢いよく平らげる
 
「あー、美味しかった」
「そうですね」
 
珈琲を飲みながらのんびりしていると
涼子は突然立ち上がり小さな紙袋と持ってきた
 
「はい、バレンタインのチョコレート」
「ありがとう」
 
開けても?と目で問えば涼子はこくりと頷き
中から出てきたチョコレートの詰め合わせに泉田は顔を綻ばせる
 
「美味しそうだ」
 
泉田は一つ抓んで口に放り込む
 
「ありがとう、美味しいよ」
「良かった…本当なら手作りとかも考えたけれど」
 
「大変だろ? 買ったので十分だよ」
 
"やめてくれ!!"
心のそんな抗議をおくびにも出さずやんわりと涼子を制する
 
「食べる?」
「うん……………泉田君?」
 
泉田が身を乗り出し涼子の顔に影が落ちる
 
「一度やってみたかったんだよね」
「何…………ん?」
 
"何を?"と言う前に塞がれる唇
泉田の舌に促され唇を開けば蕩けたチョコレートが入り込む
 
とろりとした甘味はまるで媚薬
 
「……ん」
 
離れる唇に名残惜しげな声をあげれば
泉田の舌がペロリと涼子の唇をなぞる
 
「…チョコレートの味?」
 
口の中に残るチョコレートとは違った
けれども確かにチョコレートの味
 
「当たり。チョコレート味のリップクリーム……美味しい?」
「ん……唇が美味しいから」
 
その言葉を証明するように再び重なる唇
今度はさっきよりも深く重なる
 
ニットのワンピース越しに泉田の手が涼子の身体をなぞる
 
その動きが意味するたった一つの泉田の意志を認識して
涼子はポッと頬を染めてその細く長い腕を泉田の首に回し
 
「                       」
 
泉田の耳元で囁いた一言
泉田の頬も赤く染まる
 
「それじゃあ…いただきます」
「召し上がれ///」
 
涼子の言葉に泉田は笑い
その細い身体を両腕で抱き上げた
 
"下着もチョコレート色よ、泉田君のためだけのとっておき"
 
- END -
 
 
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【あとがき】
 
涼子にチョコレート色の下着を着せたいためだけに作りました
 
彼女に手作りのチョコレートは絶対に勧められないので
市販かオーダーメイドしかないなと思いまして
 
"for 泉田"の特別感をもっと出すために
涼子にチョコレートになってもらいました
 
続きはR-18小説になりますね
(↑これが書きたかったのかな、私///???)
 
超SSSになってしまいましたが
最近のスランプを抜け出すリハビリと思って下さい
 
naohn
2012.2.15
 
 
 
 
 
 
 
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